遺骨を宝石にするという選択肢|手元供養の新しいかたち
「遺骨を宝石にする」という供養をご存じでしょうか。
大切な方とのお別れは、言葉では言い尽くせないほど深く、時に行き場のない寂しさに包まれてしまうこともあります。そんな心に、そっとあたたかく寄り添ってくれるものとして注目されているのが、「ご遺骨から生まれる宝石」です。
故人様の供養方法をお探しの方
遺骨から宝石を作ることに関心をお持ちの方
関心はあるけれど、一歩踏み出しきれない方
この記事では、そうした方々にとっての「やさしい入門書」となるよう、ご遺骨を宝石にする仕組みや種類、費用、依頼の流れ、そして後悔のない選び方まで丁寧にご紹介します。どうぞ最後までお付き合いください。
遺骨を宝石にするとは?

まずは、ご遺骨を宝石にすることの基本と、注目されている背景をご紹介します。
手元供養のひとつ
ご遺骨の供養と聞くと、お墓や納骨堂への納骨をイメージする方が多いでしょう。しかし実際はそれ以外にも、ご遺骨を粉末状にして撒く「散骨」や、自宅で保管する「手元供養」などもあります。
ご遺骨を宝石にするのも手元供養のひとつであり、大切な人の生きた証やぬくもりを、宝石という別のかたちに生まれ変わらせ、手元で大切に偲びます。もちろん法律上問題のない供養ですので、どうぞご安心ください。
ご遺骨を宝石にする仕組み
宝石は、ご遺骨から炭素を抽出し、その炭素を特殊な技術で結晶化させることで生まれます。この「特殊な技術」は高温・高圧処理であったり、炭化ケイ素を周囲にまとわせたりと、メーカーや製作する宝石の種類によってさまざまです。
結晶化したものを適切な大きさやデザインにカットすると、一般的な宝石と同じような輝きを放つようになります。ご遺骨から作られたことは、見ただけでは分かりません。
「遺骨を宝石にする手元供養」が注目される背景
かつては、ご先祖様から受け継いだお墓にご遺骨を納めることが、供養の一般的なかたちでした。しかし近年は少子高齢化や核家族化が進み、「子どもにお墓の負担をかけたくない」「お墓の管理やお参りが難しい」と感じる方が増えています。
さらに、「宗教や宗派にとらわれずに見送られたい」「好きなときに、好きな場所で故人様を想いたい」といった、新しい供養の考え方も広がってきました。
こうした時代の変化や人々の想いから、ご遺骨を宝石に加工して残す「遺骨の宝石化」という方法が、静かに注目を集めるようになったのです。

ご遺骨から作られる宝石の種類と特徴
ご遺骨から作られる宝石は、製法や組み合わせる素材によって、いくつかの種類があります。ここでは、代表的な宝石とそれぞれの特徴をご紹介します。
ダイヤモンド
故人様のご遺骨やご遺髪から炭素を取り出し、高温高圧の環境で生み出されるのがダイヤモンドです。完成したダイヤモンドは、天然のものと変わらない輝きを放ち、色やカットもご希望に合わせて自由に加工することができます。
世界にひとつだけの存在を大切にしたい方にとって、深い納得感を得られる特別な宝石といえるでしょう。
モアサナイト
モアサナイトは、ダイヤモンドによく似た見た目を持ちながら、ダイヤモンドよりも強い輝きを放つ宝石です。もともとは隕石の中から見つかったとても希少な鉱物ですが、近年は人工的に安定して製作することができるようになりました。
輝きの美しさはもちろん、省エネルギーで作れることや、環境にやさしい「エシカルな宝石」であることも魅力のひとつ。こうした特長から、ダイヤモンドに代わる新しい宝石として、今注目を集めています。
その他の宝石
ダイヤモンドやモアサナイト以外にも、ご遺骨からはさまざまな宝石を作ることができます。一例として、サファイアや麗石、真珠などが挙げられます。ダイヤモンドやモアサナイトとは違う質感やカラーバリエーションを重視して製作したい場合は、選択肢として検討してみてもよいでしょう。

ご遺骨から宝石へ|注文から完成までの一般的な流れ
この記事を読んでくださっている多くの方にとって、ご遺骨を宝石にするのはきっと初めてのことだと思います。「どんな流れで進むのか」「完成までにどんな手順があるのか」を知っておくことで、安心して検討できるでしょう。
依頼前の準備から完成までのステップをわかりやすくご紹介します。
ステップ1.作りたい宝石を考える
まずは宝石の種類やサイズ、カットのデザインを選びましょう。宝石選びで大切なのは、
「自分が何を1番重視したいか」を考えることです。
「故人様らしさ」「価格と品質のバランス」「日常的な使いやすさ」…重視するポイントによって選ぶ宝石は変わります。納得のいくまで、ご家族とゆっくり相談しながら決めましょう。なお、宝石を指輪やペンダントなどのアクセサリーにする場合は、そのデザイン選びも必要です。
ステップ2.信頼できる製作会社に依頼する
作りたい宝石のイメージが固まってきたら、遺骨から宝石を作ることのできる製作会社に依頼をします。宝石の作成に必要なご遺骨の分量と保管方法を確認し、取り分けておきましょう。原則として、ご遺骨を分ける際には「分骨証明書」が必要になるのですが、宝石を作る程度であれば不要(※)です。
ご遺骨の引き渡しは専用の配送キットを利用するほか、製作会社が直接取りに来てくれるケースもあります。
(※)宝石の量によっては必要になる可能性もあるため、必ず依頼先にご確認ください。
ステップ3.宝石の生成と仕上げ
ご遺骨から炭素を取り出し、特殊な技術を使って結晶化させます。結晶化が完了したら、ご希望のサイズや形にカットし、必要に応じてアクセサリーとしての加工が施されます。
製作会社によっては加工を海外で行うケースもあり、完成までは数カ月かかるのが一般的です。
ステップ4.受け取り
完成した宝石がお手元に届きます。品質やサイズ、デザインが希望通りになっているかを確認しましょう。
日常的に身につける場合は、硬度の高い宝石でも衝撃や強い摩擦を避けるよう注意が必要です。身につけない間はやわらかい布で包み、直射日光や湿気を避けた場所に置くことで、長く美しい状態を保つことができます。

ご遺骨から作る宝石の費用目安
ご遺骨から宝石を作るにあたっての費用は、宝石の種類やサイズ、加工方法などによって大きく異なります。ここではおおよその相場と、費用を抑えるポイントをご紹介します。
遺骨ダイヤモンドの価格帯
遺骨ダイヤモンドの製作には、大きなエネルギーと特別な設備が必要です。さらに、多くの場合は工程のほとんどが海外で行われるため、どうしても費用が高くなる傾向にあります。
小サイズの0.2カラットでおよそ60万円、1カラットを超える大きさでは300万円以上が目安です。遺骨ダイヤモンドは、天然のダイヤモンドと同等の化学成分、結晶構造、光学的・物理的特性になるともいわれ、まさに、「世界にひとつだけ」という特別さに心を惹かれる方にとっては、納得のいく選択となるでしょう。世代を超えて受け継ぐことを考えれば、長く大切にできるかけがえのない宝物になります。
遺骨モアサナイトの価格帯
モアサナイトは、ダイヤモンドに比べて少ないエネルギーで安定的に作ることができるため、費用を抑えやすいのが特徴です。
1カラット相当でも数十万円から製作でき、例えば「リヴナイト(遺骨モアサナイト)」を製作しているIroatiqueでは、0.2カラットで16.5万円、1カラットは22万円となっています。
美しい輝きやデザインへのこだわりと、手に取りやすい価格、どちらも重視したいという方には、おすすめの宝石です。
その他の宝石の価格帯
その他の宝石の相場を以下にご紹介します。加工内容や大きさによって異なりますので、
詳しくはそれぞれの会社にお問合せください。
・サファイア:約30万円から
・麗石:約10万円から
・真珠:約50万円から
費用を抑えるポイント
大切な想いを託す宝石だからこそ、安さだけで決めたくない。でも、自分の暮らしに合った負担のない価格で選びたい…そう考える方は少なくありません。
費用を抑える方法としては、「宝石サイズを少し小さくする」「カットや装飾をシンプルにする」「国内で製造している会社を選ぶ」などがあります。国内加工なら輸送コストや時間を抑えられ、もしものときにも迅速に対応してもらえます。
さらに、複数の会社から見積もりを取り、価格だけでなく品質や保証の内容も比べることで、納得のいく特別な宝石へと生まれ変わらせることができるでしょう。

遺骨から作る宝石の活用方法
完成した宝石は、さまざまなかたちで日常の中に取り入れることができます。ここでは代表的な活用方法をご紹介します。
アクセサリーとして身につける
もっとも一般的なのは、宝石を指輪やペンダント、ブレスレットなどのアクセサリーに加工して身につける方法です。ふと寂しさに駆られたときや、心細くなったとき、手元や胸元にある宝石にそっと触れることで、大切な人がそばにいてくれているような安らぎを感じることができるでしょう。
日常使いを考えるならシンプルで透明感を活かしたものを、特別な想いを表現したいなら、華やかな装飾が目を引くデザインがおすすめです。
インテリアとして飾る
専用のガラスケースや木製の小箱に宝石を収め、部屋の一角に飾る方法もあります。窓から差し込むやわらかな光が宝石に映り込み、きらめきが部屋いっぱいに広がると、故人様の面影をより近くに感じられるかもしれません。
日々の暮らしの中でふと目に入り、静かに心を和ませてくれる──そんな特別な存在として寄り添ってくれるでしょう。
家族で分け合う方法
宝石をいくつかに分けて作り、ご家族それぞれが手元に持つという方法もあります。離れて暮らしていても、宝石を通してお互いのつながりや絆のあたたかさを感じられるはずです。
遺骨から宝石を作るときの注意点
ここまで、ご遺骨を宝石に変える方法や種類、費用の目安、そしてその活用例についてお伝えしてきました。「遺骨から宝石を作る」ということに迷いや不安を感じていていた方も、新しい供養のかたちのひとつとして心に留めていただけたなら幸いです。
ただ、一度宝石に加工したご遺骨は、元の状態に戻すことができません。そのため、この方法を選ぶときには、ゆっくりと気持ちを整えながら考えることが大切です。
ここからは、後悔のない選択をするために覚えておきたい3つのポイントをご紹介します。
家族や菩提寺と話し合う
ご遺骨から宝石を作ることについて、ご家族や身近な方の理解を得ることは何よりも大切です。供養の考え方は人それぞれ違うため、事前に気持ちや希望をゆっくり話し合う時間を持ちましょう。先祖代々お世話になっている菩提寺がある場合は、寺院のご意向もきちんと確認しておくと安心です。
理解や同意が得られた後は、「どの宝石にするか」「誰が持つか」「どのように身につけるか」などを話し合い、全員が納得できるかたちを一緒に決めていきましょう。
信頼できる会社を見極める
大切なご遺骨を預けるからには、信頼できる会社を選ぶことも大切です。見積もりの内容が明確で、製作の流れや保証内容を分かりやすく示してくれるところを選びましょう。公式サイトやパンフレットに、製作期間や仕上がりのサンプル写真が載っているかも確認すると安心です。
口コミや体験談も参考になりますが、できれば実物サンプルを見せてもらい、輝きや仕上がりを自分の目で確かめてから決めると、より納得して任せられます。
契約前に確認すべきこと
製作にかかる期間や費用、必要なご遺骨の量など、細かな条件は事前にきちんと確認しておきましょう。また、宝石製作で余ったご遺骨を返してもらえるかどうかも、大切な確認ポイントです。
契約書は必ず最後まで目を通し、わからないことや気になる点があれば、その場で遠慮せず質問することが安心につながります。

遺骨から作る宝石に関するFAQ
ペットの遺骨を宝石にする場合、必要な遺骨量は人より少なく、小さめのジュエリーやペンダントトップとしてかたちに残す方が多くいらっしゃいます。遺骨だけでなく毛や歯、愛用していた首輪などを使用できるサービスもあり、家族の一員としての愛情や感謝の気持ちを残す供養方法として近年注目を集めています。
ご遺骨から作られる宝石の多くは、海外で製作されています。海外には高度な設備や技術が整っている一方で、「遺骨を遠い国に送ること」や「万が一トラブルが起きたときの対応」に不安を感じる方も少なくありません。
その点、国産の宝石には、大きな安心感があります。ご遺骨の受け取りから完成まで一貫して国内で管理されるため、品質が安定しているだけでなく、「トラブルや不明点にも迅速に対応してもらえる」「供養文化に対する行き違いが生じにくい」などの点が魅力です。こうした安心感は、長く寄り添う宝石を選ぶうえで大きな支えとなるでしょう。
宝石を作るために必要なご遺骨の量は限られています。多くの場合、残ったご遺骨は別の方法で供養しなくてはなりません。
選択肢としては主に以下が挙げられます。
・お墓や納骨堂に納骨する
・ミニ骨壺などに納めて自宅で供養する(手元供養)
・ご遺骨を粉末状にして海や山に撒く(散骨)
それぞれの特徴や違いを押さえた上で、ご家族と相談して決められるとよいでしょう。
想いや願いを光に変えて──「遺骨の宝石化」という選択肢
近年は、さまざまな供養方法が選べるようになりました。その中で「ご遺骨を宝石へと生まれ変わらせる方法」は、愛情や感謝といった想い、そして「ずっとそばで見守っていてほしい」という願いに寄り添ってくれる、新しい選択肢です。
大切な人を失った悲しさや寂しさは、いつもふいに訪れるもの。涙がこぼれそうになった時、指先や胸元に灯る輝きが、あなたの心にそっと光を灯してくれるかもしれません。
「遺骨から宝石を作る」という選択肢が、明日を今日よりもほんの少しだけ、明るく照らしてくれますように。